柳家喜多八 小ゑん 『新・試作品』 @本所地域プラザ

柳家小ゑん「青菜」
柳家喜多八「夏どろ」
仲入
柳家小ゑん「銀河の恋の物語」
柳家喜多八「元犬」

去年初めて観て死ぬほど笑った小ゑん師匠と、言わずと知れた色男、喜多八師匠の二人会「試作品」。一度行ってみたいと思いつつ、落語協会2階のお座敷が会場と言うことで毎回行列&ギュウギュウ詰めらしい(-ω-;)とか、小ゑんさん初見のインパクトが強烈過ぎたため至近距離で観る勇気(-ω-;)とか、なんとなく二の足を踏んでいました。しかし最近広め&椅子席の会場に変わったと知り(それで「新・試作品」)、今回初参加!

てれてれと登場した小ゑんさん、小三治師匠がトリをとる寄席に出演中ということで、すごいですよ連日満員で!とニヤニヤ(基本ニヤニヤしてるw)。しかし毎日最前列に同じお客さんが居たりして「同じ噺をかけるんじゃないよ!」というプレッシャーがすごいんだけどそういう本人が毎日同じ服を着て来るのはなんなんだっ!とニヤニヤしたままキレてくるあたり、やぱり不穏な空気ハンパない。今日は一体何を聴かせてくれるんだろう…?!と思ってたらしれっと「植木屋さん、ご精が出ますな」ってまさかの古典「青菜」――!

青菜を聴くと「ああ夏だなぁ!」と思いますが、まさか私の夏が小ゑんさんで幕をあけるとは思わなんだw 去年の冬の出会いがやりたい放題な新作2連発だったのですっかりそっちのイメージだったんですが、小さん師匠のエッセンスを随所に感じられる正統派青菜にビックリ。いやぁほんとに小さん師匠の弟子だったんですねぇ(疑ってるw) ちょっとなんかふわっふわしてましたけどw

まぁでも小ゑんさんがこれで終わるはずないわけで、二席目は新作落語「銀河の恋の物語」。地球で七夕の準備をするほのぼの家族と、銀河で逢引をしつつ地球人の短冊を査定する織姫&彦星とが織りなす、天文オタクの小ゑんさんならではの一席ですが、もう冒頭の「永ちゃんをノリノリで聴く息子」が気持ち悪くて最高。やっぱりこの人の「生まれ持った挙動不審」はスゴイ。その定まらない目線と締まらない表情、怪し過ぎる仕草などが、行き先の見えないストーリーと相まって観客を惑わしつついつのまにか魅了し、まさに何万光年もの旅を経てよく分からない世界に連れて行かれるのが超楽しいっ♪

喜多八さんはいつも以上に顔色が悪く、頬もこけ、なんだか一回り小っちゃくなったよう。と思ったらやはり体調不良ということで、この暑さで調子が良くないところに大好きな師匠が亡くなったりしちゃってねぇ…と元気がない。しかし調子の悪そうな喜多八さん演じる所の博打でスッカラカンになり死んでもいいやとふて寝している男が妙に迫力があり、その家に盗みに入ったはずが逆にどんどん金を巻き上げられてしまう気のいい泥棒とのやりとりがしみじみ可笑しく、体調不良すら逆手に取ってしまうなんざさすが!と感心。夏どろは小さん師匠の録音をよく聞いているので、小ゑんさんの青菜に続いてこちらも小さんエッセンスを満喫。ひとつ抜けていた小噺を、二席目に出てきた時に「さっき入れるの忘れちゃったんだけどやりたかったからやっていいですか」と突然それだけやっちゃうのが喜多八さんらしくて素敵♪

元犬は、人間になりたいと願をかけた白犬が念願かなって人間になったはいいけど、中身が犬のまんまなのであちこちで騒動を巻き起こす、というドタバタ噺。足を洗った水を桶から飲もうとしたり、出かけようとしたら下駄を咥えて走り出しちゃったり、訪問先の家で玄関の敷居に顎を乗せて寝ちゃったり、怒られたり呆れられたりしながらも終始一生懸命なシロが可愛らしくて大笑い。しかし一席目よりだいぶ調子が良さそうとは言うものの、「ハッハッハッハッハッ」と舌を出した荒い息遣いで犬を熱演する喜多八さん、そのまま白目向いて倒れちゃうんじゃないかと心配でした。しかしあれですね、「目病み女と風邪引き男」とはよく言ったもので、調子悪そうでやつれた喜多八さんがいつにも増して色っぽくてうっとり…(←バカ)。小さな体で静かに端坐する姿も美しく、木彫りの彫刻かなんかにして床の間(無いけど)に飾りたいくらいでした。

初めて行った試作品は今まで小さな会場でやっていただけに、そこここで「おやどうも!」「先日はあれでしたな」みたいな会話が繰り広げられ、最前列がまるで席が決まっているかのようにおじ様連で綺麗に埋まるなど、やはり「常連」率が高い印象。私は小ゑんさんとちょうど良い距離感を保てて安心(?)だし、大好きな二人を二席ずつ聴けて2千円は破格だし、また行きたい!と思いつつ開始時間が早いので(18:30開演)そうそう行けないんだよなぁ…。でも今まで指咥えてた会に初めて行けて大満足でしたー♪