柳家小三治独演会@赤坂区民センター

柳家一琴「転失気」
柳家小三治時そば
仲入
柳家小三治粗忽長屋

私の最愛の噺家小三治師匠。人間国宝五代目小さんの弟子にして、私が二年前から熱愛中の喜多八さんの師匠。そして去年ついにご本人も人間国宝に選ばれました。喜多八さんと恋に堕ちたり(!)、寄席で他の噺家に興味を持ったり、昭和の噺家を図書館で発掘したりして、お気に入りの噺家は色々増えて来ていますが、でもやっぱり小三治師匠は私の中でいつまでも別格。容姿・声・語り口・間・表情…全てが私にとって完璧な唯一無二の噺家なのです。

そんな小三治師匠も今年で75歳。人気は衰えるどころかますます勢いを増し、去年人間国宝になったのがそれに拍車をかけ、なかなか至近距離で観る機会が得られません。独演会でも大きなホールで遠くから見るのが関の山なので、ipodで毎日毎日聴いている私はついそれならいいかと最近あまり観に行ってなかったんですが、ヤフオクでいい席を見つけたので久々に行ってきました!なんと前から3列目という良席で、こんなに近くで小三治師匠を観るのは初めて!と開演前から大興奮。

聴きなれた出囃子の中スッと現れ、金屏風の前に黒紋付きで静かに座る小三治師匠を観ただけで、「ああ今日ここに来てよかったなぁ!」としみじみ思い、「えー…」と一声発しただけで、ああいつも聴いてるあの声だ…!と、もう本当に心を満たしてくる至福感が半端ない。

小三治師匠と言えば「まくら」。この日もさだまさしの歌について熱く語ったり、また一節を歌って見せたりとたっぷり。そしてさらっと時そば。仲入りを挟んで粗忽長屋小三治師匠の噺の魅力と言えば、押しつけがましくなく飄々とした語り口で描かれる、登場人物の可愛らしさ、憎めなさ、そしてなんともいえず温かい人と人との交わり。時そばで勘定をごまかそうとする男も、粗忽長屋でてんやわんやの面々も、その一生懸命で愛嬌たっぷりな様子が鮮やかに目に浮かび、アハハと笑いながらいつの間にか嫌なことも全部忘れちゃいます。

ご自分でも「最近よく噺を忘れちゃって。歳ですねえ」とおっしゃっていた通り、噺はところどころつまずいたり、噛んだりしていましたが、それを補って余りある小三治ワールドがホール全体を温かく包んで、会場全体にニコニコ幸せな気分が充満。小三治師匠の今までの高座を観ればこの人にどれだけの才能があるかというのは十分みんな分かっていますので、もう今は噺の出来どうこうだけではなく、とにかくこの人の高座に触れたい!声を聴きたい!という一心で、こんなに人が集まるんだろうな、とみんなの小三治師匠への愛をしみじみ感じた夜でした♪

久々に小三治師匠を間近で観た感動で、高座の感想と言うより「愛を語る」みたいになっちゃった。