鳥越落語会@浅草橋区民館

三遊亭粋歌「コンビニ参観」
柳家喜多八「寝床」
仲入
ぴろき 漫談
柳家喜多八「大工調べ」

年明けから突然仕事がドカドカ降ってきて全然落語に行けないままもう3月。
喜多八さんに会えない生活に精神を蝕ばまれ、毎晩家でぢっと手を見ていた私はもう今日こそは!今日こそはと無理やり仕事を終わらせ、なんとか会場に駆けつけました!もう会社出た瞬間からニヤニヤが止まらないっ!

「寝床」
義太夫(三味線に合わせて節をつけて語る芸)にハマり、自分の店でお披露目会をしたい主人と、その義太夫がヒドイので行きたくない町内の人&奉公人とのドタバタ滑稽話。のっけから「今日はお披露目会だ!」と料理の準備や会場設営に浮足立つ主人の「ウキウキ」があっという間に観客を巻き込み、会場全体がウキウキ♪その後町内と奉公人の全員から欠席連絡(仮病)を受け、最後に残った繁蔵という奉公人に主人が「お前はどこも悪くないんだろ?」と迫る場面があるんだけど、怯えた繁蔵が必死に目を泳がせ、周囲を見廻し、果ては両手の指まで検分して「ここにサカムケがあります!」って(笑) 

子供のようにはしゃいだり怒ったり機嫌を直したりする喜多八さん、じゃなかった主人が可愛すぎて終始ニヤニヤしながら観ていましたが、終盤本当に義太夫をうなってみせる場面があってビックリ。色んな人の寝床聴いたことあるけどこれは初めてでした。義太夫自体を聴いたことなかった私は「へえこういうのなんだ!確かに下手な人のこれをずっと聞くのはキツイな」と思ったり、でも喜多八さんは声も素敵なのでずっと聴いてられるな、と惚れ直したり(←バカ) あー念願の喜多八さんの寝床、楽しかった♪

「大工調べ」
ずっと聴きたかった喜多八さんの大工調べッ!!江戸っ子とは…のマクラで「おや…?」と思い、冒頭の台詞「おい与太ぁ!居るかぁ?」で「ギャー!大工調べキタ――――!」と内心狂喜乱舞。先月行けなかった落語会で喜多八さんがこれをかけたのを知って地団太を踏んでいた私になんたる僥倖!!

この噺はなんといっても主人公の大工の棟梁とインゴウ大家の長台詞の罵り合いが見もので、特に棟梁の威勢の良さと歯切れの良い啖呵はこれぞ江戸っ子!という感じでほんとうに聴いてて気持ちいい。私にとって最高最強の大工調べは40代頃の小三治さん。あの明るくリズミカルな口跡が棟梁にピッタリで、鮮やかにトントントントーンと勢いよく啖呵を切っていくところなんざもう…ほんとに誇張じゃなく鳥肌立ちます。うっとりします。大好き。で、喜多八さんですが、喜多八さんは「ぼやき」を味とする噺家さんなので、啖呵とかどうなんだろうと興味というか不安もあったんですが(個人的意見です)、なかなかどうして素敵でした。ただ喜多八さんがやると、明るく真っ直ぐで男気溢れる棟梁より、頑固で意地の悪いインゴウジジイ(大家)が際立つところがさすがだなと(笑) 

私は小三治さんとは一味違う喜多八さんならではの大工調べを堪能し大満足でしたが、喜多八さんは一席目のまくらで「今日は二席目に、この会ではやったことないのをやりますからね」とドヤ顔で言っていたと思ったら二席目上がるなり「ネタ帳調べたら過去2回やってた。すみません」と謝り(笑)、「やっぱりモノにならないやつはやっても忘れちゃうんだね~」とおっしゃっていたので、やはりあの啖呵の場面に苦手意識があったりするのかしらと思いました。でもそこに喰らいついてチャレンジしていくのが常に前へ前へという勉強熱心な喜多八さんならでは!素晴らしい!パチパチパチ!

久々の落語会、喜多八さんに会える喜びもさることながら、落語会の雰囲気や、お客さんの一体感などなど、「そうそうこれこれ!」という感じで全身で楽しんでまいりました。しかし今回、私の目の前には終始顔をのけぞらせて爆睡→仲入りの時だけ急に起きて静かにお茶を飲むという謎のオヤジ、隣には身を乗り出すあまり私の肩に触れんばかりの距離でずっと口をパクパクしてるおじいさん、後ろには喜多八独演会で「喜多八はさ~」と偉そうに批評するという命知らずな夫婦、と周りが非常に濃かった!まあこれも醍醐味と言えば醍醐味ではあるんですが…笑 というわけで今年も喜多八さんは素敵ですっ!仕事の忙しさにめげず、というかだからこそ、今年もたくさん落語に触れる一年にしたいです!