昭和の名人 on スクリーン @東劇

六代目 三遊亭 圓生 「首提灯」
八代目 桂 文楽明烏
五代目 春風亭 柳朝 「粗忽の釘
十代目 桂 文治 「二十四孝」

銀座の東劇で「落語研究会 昭和の名人 八」と銘打って、今は亡き昭和の名人の高座がスクリーンで上映されています。噺家や演目を変えて大体年に一回やっているようですが、今回初めて行ってきました!(入ってまず、ロビーに飾られた今までのポスターの豪華な顔ぶれに悶絶!)

圓生は十八番の首提灯。1960年にはこの演目で文部大臣賞も獲っているそう。武士にスパッと首を斬られた町人が気付かずそのまま歩いて行くんだけど、首が…ん?なんか…変?あれっ?!というパントマイム的仕草が見どころの演目なので、まさにスクリーン上映にうってつけ! 武士と町人の身分の差やいざこざをテーマにした小噺で、当時の世相を分かりやすく伝えながら絶え間なく笑いを取り、満を持して首提灯につなぐ展開が素晴らしい。見どころの首も、揺れたりズレたり「ひゃっ!落ちる!」なんてヒヤヒヤしながら超楽しかったです♪途中出てきた小噺「胴斬り」は、一刀両断された町人がその後、上半身は銭湯の番台、下半身はこんにゃく屋でイモ踏みに勤しむというシュールな噺で大好きなんだけど、「旦那ぁ、上半身に言ってやってくだせぇ」なんて、下半身は一体どうやってしゃべってるんだろう?!といつも大笑いしちゃう。 

文楽と言えば明烏と言われるくらいの代表作。今回の私的目玉です。文楽って写真でみるとしなびたおじいさんなんだけど(失礼!)、なんなんでしょう、話し出すとパッと明るい華やかさと浮き立つような雰囲気が溢れ出して、もうほんとにスキップしたくなる楽しさ。CDでも十分に堪能してたけど、映像で見ると表情も仕草もさらに幾層倍の効果を添えて、圧巻の一席でした。そして文楽明烏で有名なのはなんといっても甘納豆の場面。吉原で花魁に振られた男が翌朝、甘納豆を一粒ずつ食べながらブツブツ愚痴を言い、最後に手をはたいて砂糖を落とす。男の哀愁を際立たせるのにも、笑いを誘うのにも甘納豆が絶妙の小道具として効いていて素晴らしい。そして甘納豆が美味しそうなこと!当時の寄席では文楽明烏がかかると売店の甘納豆が売り切れたそうです。CDではこのシーンはいつも想像するしかなかったので「やっと観られた!」と感動しました。

五代目柳朝、私この方ノーマークでしたが、談志・志ん朝圓楽と並び四天王と称された人だそう。なんか近所のオモロイおっちゃんがパーパーしゃべってるみたいで親しみやすく、何も考えずゲラゲラ笑っちゃう。今回落語好きの父と、落語よく知らないけど銀座行きたいだけの母と3人で行ったんですが、母はこれが一番面白かった!とご満悦でした(圓生では速攻寝てたw)。粗忽の釘という定番の噺なので油断して聴いてたら、途中聴いたことも無いシーン(下ネタ)が入っていたり、サゲも普段聞いてるのと違ってビックリ。しかし最後まで威勢のいい語り口とテンポが観客のハートを鷲掴みで、母も含め一番観客の笑い声が響いていました。当時の寄席では爆笑の渦だったんだろうなー!生で観たかったなー!と思わされました。春風亭一門の粗忽の釘、興味が湧いたので要チェック。

十代目桂文治は、この4人の中では一番最近の人なので顔は観たことがありましたが、高座を観るのは初めて。面白くもねえという顔で口をとがらしてしゃべる姿から、ひねくれたガンコジジイ(褒めてます)というイメージでしたが、まさにw 親を親とも思わず礼儀も知らない男が大家に説教を受けるも、悪態ばかりついて話が通じないというこの噺がピッタリ!可愛らしい顔とちょっと甲高い声が何とも言えない愛嬌を醸し出し、憎らしいことばかり言ってる主人公が実に魅力的。中国の色々な故事を持ち出し、親を大切にと説く大家に向かって「なんだか知らねえけど、モロコシ(中国)の年寄は食い意地が張ってんだね。鯉が食いてぇの、筍が食いてぇのって。ケッ!」に大笑い。ちなみに先日私が図書館で借りてためっちゃ怖い顔の落語家は、先代(九代目)桂文治

ゴールデンウィークの午後で客席は5割くらいの入り。客層は9割が60代以上といった感じでした。約1時間半の上映時間中、真ん中に5分の休憩(「仲入り」と画面に出るw)が入ったり、にも関わらず上映中もトイレに立つ人が結構居たり、全席自由席で入れ替えなし、全体的にゆる~い感じで居心地が良かったです。場内では結構笑い声が響いており、仲入りに張り切って「さあ甘納豆買ってこよう!」なんて冗談を言うおじいさんに周囲が笑ったり。実際売店に甘納豆は無かったようですが、明烏をやるんだから売店もそれくらい洒落っ気を出してくれてもいいのに!と思いました。父さんと落語談義もできたし、母さんもよく眠れたようだし(!)いい休日でした。

上映は明後日15日まで、興味のある方はぜひ♪