ひとりらくご「柳家喜多八」@ユーロライブ渋谷

今月から始まった「渋谷らくご (シブラク)」。のっけから私の愛する喜多八師匠の一人会があったので、なんと慧眼の企画者!分かっとるねぇ君ぃ~♪と鼻の下を伸ばしながら行って参りました。

〝寄席のない渋谷に、定期落語会が誕生!実力落語家と渋谷が遭遇する、新しいスタイルの落語会です。今後は毎月第二金曜日から5日観の公演となります。たっぷり聴かせます!″

だそうです。会場はフカフカな椅子が気持ちいいミニシアター。客席が若干階段状になっているので、4列目くらいに座ったらちょうど高座と目線が同じ高さになり、距離も近いのでドキドキ♪あ!目が合った!みたいなね(←バカ) 客の入りは5割くらいかな。やはり特筆すべきは年齢層の低さ。いつもの公民館落語会や寄席で主流の中高年~おじいちゃんおばあちゃんといった世代がほぼ皆無。同世代もしくは年下ばかりという感じでした。20代らしき男子や若々しい笑い声を響かせキャアキャア言って入ってくる女子達とか。受付や案内の人たちもみんな渋谷系(←よく知らんけど)オシャレ男女ばかりで、いつも公民館の受付のおじいさんに飴をもらってなごんでいる私としては、こ…ここにあのヨレヨレの(褒めてます)喜多八師匠が?!と違和感。ちなみにこの会場までは、路地をひょいと曲がったら突如出現したいかがわしいホテル街の真ん中辺、という衝撃のルートだったんだけど、それは師匠を観に行く道中として、特に違和感なかったですw

出囃子と共に出てきた喜多八師匠はいつも以上に顔色が悪く、座布団に座って客席見てもぞもぞして落ち着かないご様子w 

なんだか新しいところでやるっていうのはね、これでも色々考えたりするんですよ、あんまり長いのやってもね、飽きちゃうだろうし、第一こっちも疲れちゃうし。だから今日はね、軽いのを一個やってね、まあそのあとに趣向の違うのをもう一席やろうかなとね、まあ思ってますよ。

落ち武者
七度狐
お直し

大口開けてゲラゲラ笑う寄席の主役高年齢層が居ないので、全体的に笑いは少なめ。そして通常の落語会とはウケ方が全然違う。いつもはどっかんどっかん来るポイントでそうでもなく、そこ?!ってとこで結構笑い声があがったり。面白い。

あまり落語に馴染の無いお客さんを相手に、まずお客さんの緊張を解き落語の世界に連れてくる(艶笑噺)→派手で分かりやすい話で盛り上げる(滑稽噺)→渋めの噺でまた違った魅力を見せる。という構成で、最初ちょっと硬かった客席がどんどん雪解けしてそこここで笑い声が上がり、みんなでドッと笑う!みたいな完璧な流れ。一時間一人で語り尽くす!という触れ込みだったので、大ネタをじっくり語ってくれるんじゃないかと期待していた私は当初ちょっとこの演目に残念感があったんだけど、全て聞き終わって反省し感動。さすがです師匠。

お直しは、まあ笑うところももちろんあるけど、基本的には極限での夫婦の愛みたいなものを描いた人情系の噺なので、笑いを求めて来た若い人が多そうなここでお直しをかけるか!とその心意気に感服。ちゃんと分かってもらえるかな?ウケるかな?!とお前誰目線だ状態でちょっとドキドキしながら観てたんだけど、杞憂もいいとこでした。遊蕩に金を使い果たしてしまうダメ亭主と、それをなんだかんだ言って支える妻が、いつものように可愛らしく、色っぽく、時に激しく、切なく、降臨。あっという間に客席が前のめりに巻き込まれ、終わった時には割れんばかりの拍手でした。素晴らしい。

ヨレヨレでやる気の無いように見えて、実は芸に真摯で、誰よりも勉強熱心な喜多八師匠。慣れ親しんだ会や自分のことを好きで来てくれるお客さんの前だけでなく、寄席やそれ以外の会で自分に興味の無い人の前でやってこそ得るものがあるのだ。とおっしゃっているのをどこかで読みましたが、これもまさにそうなのかなと。まあ喜多八さんの会なので、喜多八さんに興味が無い人は来ないと思うけど、それでも落語に馴染の無い街渋谷の、それもホテル街の中の小さな会場で突然始まった落語会に、自分が寄席でトリを取る初日に、出演快諾します?!その旺盛な探究心とどこででもやってやろうじゃないのという肝の太さ、新宿でのトリの出番の一時間前まで渋谷で熱演しちゃう向う見ずなタフさ。全て本当に素敵です。大好きだ―――ッ!

ということで、渋谷の落語会。数人の落語家が次々出る寄席風の日もあれば、一人の落語家が語り尽くす日もあり、色々企画しているようですので、興味のある方はぜひ♪