柳家小三治一門会@練馬文化センター

柳家小はぜ「たらちね」
柳家福治「お見立て」
仲入
花島世津子 奇術
柳家小三治禁酒番屋

去年の12月にここ練馬文化センターで観て以来の小三治師匠。
去年はなんと喜多八師匠との競演でもあり、大興奮でチケットを取ったのですが、今年はただただ小三治師匠に会いたいというしみじみとした愛に突き動かされ、チケットを取りました♪やはり一年に一度は小三治師匠に会わないと、私の人生が立ちゆきません。

衝撃は奇術。3人の女性が出てきてまあお花出してみたり消してみたり、コマゴマとした手品をやっているのをぼーっと観てたんだけど、突如客席に降りておじさんを舞台に引っ張り上げた……!いや数百席の小さな会場でならよくある光景だけど、小三治目当ての1000人以上がひしめくこの大きなホールでそれやる?!と驚愕。寄席の手品の手伝いさえ無理な私はただただおじさんに同情し、ヒヤヒヤしながら観ていましたが、リーダー格のおばちゃんにいじられても茶化されてもめげずに飄々と対応するオジサマ素敵でした。しかしこの人たちが出る時は前の方の席は取らないように、あとは父を連れてこないように(うちの父はこういうの大好きで呼ばれなくてもハーイハーイ!って出てっちゃうので)、と肝に銘じたワタクシでした。

小三治師匠の出囃子、もうほぼ毎日ipodで聴いてるので鳴り出すと自然と顔がニヤケてしまう…そして師匠がふらぁ~っと出てくる姿を見ただけで幸せな気持ちに。まくらではインフルエンザの予防接種に行ったら無料だったと話し、喜ぶのかと思いきや「75歳以上は無料って……それじゃもうおしまいみたいじゃないか!」と憤慨。「だから今日はね、あたしは機嫌が悪いんです」とつぶやきお茶をすすりしばしの沈黙… 素敵♪
小三治師匠の禁酒番屋は数年前に独演会で聴いたことがあり、ひいひい言いながら笑った覚えがありました。殿様の一声で禁酒となった城内で我慢が出来なくなった侍が酒屋に酒を持って来いと無理強い。しかし城の入り口では酒を持ち込ませないための禁酒番屋で番人が待ち構えており、あの手この手で酒を持ってくる酒屋と決死の闘いが繰り広げられる…! 最終的に開き直った酒屋が繰り出す「仕返し」が強烈で、ほんとに城内、じゃなかった場内大爆笑。もう禁酒番屋のおじさんたちも、酒屋の若いモン達も、みんな愛すべきおバカばっかりで最高。

小三治師匠の30~40代の頃の大工調べとか大好きで、ほんとあのキレッキレの啖呵は何度聞いても鳥肌もんなんだけど、70を過ぎて飄々とした枯淡な味わいが増し増している小三治師匠は、ところどころ口跡があやしかったり、間があったり、ちょっとドキドキもするけれど(笑)、それがまた違った面白さ、味わいを醸し出し、あの風貌と相まって何とも言えない芸になっているのがさすがの人間国宝なのであります。
私の周りは中高年のご夫婦が多かったんですが、みんなほんと楽しそうに大笑いしていて、幸せな空間でした。つい混んでるからな、とかどうせ遠くからしか見られないしな、とか敬遠してしまうんだけど、どんどん熟成されていく小三治師匠の芸の瞬間瞬間を見逃さないよう、もっと頻繁に観るようにしたいなと思いました。

終演後、たまたまこのチケットを取っていた(さすが小三治師匠ならではの奇跡!)落語仲間と合流、これはもう酒だ酒だと練馬駅前の路地へと迷い込み、やったりとったりぐびぐびと至福の時間を過ごしました。
ただ、私の選んだ店がショボすぎたことと、熱燗を注文しようとしていた横から「ぬる燗がいいぬる燗!」と騒ぎ、ずっとぬる燗にしちゃったことを今反省しております。禁酒番屋を聴いた後で熱燗ならまだしも「ぬる燗」て…ねえ…(この辺お下品なので禁酒番屋分かる方だけ分かって下さいw) でもま、美味しかったから、いっか!
ご機嫌で家路に着いた千鳥足の私は早速ipodを取り出し、五代目小さんの禁酒番屋を聴きながら、ぬる燗の味わいを思い出し、思い出し、帰ったのでした。