志ん生礼賛

好きな落語家さんは何人か居て、いつ聴いても引き込まれ、大笑いしちゃうけれど、
辛いとき、凹んだときはなぜか志ん生を聴きたくなるということが最近分かった。
ちょっととぼけたような、マイペースの語り口が何とも言えない。
独特の間とそらっとぼけた話し方で飄々と話を運び、決してこちらに媚びてくるわけでもないのに、
いつの間にか話の世界に全身引き込まれ、滑稽話はつい声を出して笑うほど面白く、
人情話はふと涙ぐんでしまうくらいしみじみと聴かせる。
辛いことがあっても、これからどうしたらいいだろうと途方に暮れたような時でも、
志ん生を聴くとなんだか「いいんだよぅそんなのどうだって馬鹿だねおまえは」とあの調子で、
肩をポンと叩いてもらったような気分になり、力がふっと抜け、一歩ずつでも歩いて行こうと思えた。

私は志ん生の演じる夫婦のやりとりが大好きだ。
最近聴いてる中では「替わり目」「鮑のし」あたり。
かしましく言い合う中に、それでも確かににじみ出る相手への想い、
お互いなくてはならないという確固とした結びつきを感じる。
自分の恋愛で悩んでいる時などには、時にうらやましく、時に辛く。
「そうだよな、こういう二人が本当だよな。」としみじみ思わされたり。
でもいつまでもしみじみとはさせてくれず、いつの間にかまたあの志ん生の可愛らしさ・愛嬌に
引き込まれ笑わされ、温かい気持ちになり、元気にしてくれる。

NHKオンデマンド志ん生のびんぼう一代記、という番組があったので観た。
談志が出てきて解説したり、まあ当時の映像や家族へのインタビューなど
貴重な資料はたくさんあってそれなりに面白かったんだけど、
最後にやっと志ん生の落語「風呂敷」の貴重な映像が流れ、大喜びで見てたら
途中でエンドロールが流れて談志の語りにオーバーラップして番組終わっちゃった。
落語の途中で。風呂敷持って出かけていく前に。
おーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!
志ん生ファンばかりが観ると思われる番組で、ファンが一番食いつくであろう場面でこの仕打ち!
これを観た志ん生ファンはみんな同じショックを受けたことでしょう。
ということで悔しくて、欲求不満で(笑)、youtubeで探してみたところ
なんとありました!志ん生の「風呂敷」!
そしてニコニコ&大笑いで鑑賞。大満足。
風呂敷を持って出ていくまでの夫婦のやりとりも大好きでした。

何度聞いても飽きない、どんな時でも聴いた人をあたたかい気持ちにしてくれる、
志ん生の落語はやっぱり誰にも真似できない、とてつもない魅力がつまっているのだ!