島田荘司(御手洗探偵) 二発!

「水晶のピラミッド」
いやーこれは過去に類を見ないすごい作品でした!
なにがすごいかって、全700頁超の中で御手洗探偵が登場して本編が始まるのがなんと400頁から!!それまでの300頁は延々と「古代エジプトの話」と「タイタニック号の沈没」について読まされますが、これも謎解きのカタルシスのためだ!なんて歯を食いしばって読む私たちを待ち受けるのは、前半ほとんど関係なかったよねっていう解決篇です。しかも解決篇は解決篇で、一生懸命読んでなんとか理解し、なるほどぉ!とか感動してたトリックを最終的に「あれは嘘」とか言われたりしてですね、もうほんとなんなのっていう。やりたい放題か島田荘司!っていう感じです。これはもう感想というより愚痴ですね。

「斜め屋敷の犯罪」
私が衝撃を受けた彼のデビュー作「占星術殺人事件」に次ぐ2作目だそうで、これもファンの間では傑作の呼び声高く、amazonレビューでも絶賛の嵐。
でも…うーん…そう?そうかな?と小声で言いたい(笑)
雪深い北海道(また北海道かよ!)の僻地に立つ「斜め屋敷」はその名の通りわざと傾いて建てられたお金持ちの家。ここで殺人事件が起きるんだけど、雪に足跡がないぞ!とか、こう一人ずつ殺されていく感じとか、内輪モメしだすところとか、もう全てが「ザ・ミステリー」で舞台や道具立ては完璧。そしてトリックはさすがの島田荘司で奇想天外・荒唐無稽で驚かされます。でも一方人間関係や動機など内面部分の描写が薄く、物語性は乏しいです。
だから謎解きメインで楽しむ方々(それがほんとのミステリファンなのでしょうね、おそらく)には文句なしの満点なんだと思います。しかし私はやっぱりまず人間達の想いとか情念的な部分(物語)に引き込まれないと、全然トリックとかにも興味が持てないという(笑)つまり純粋なミステリファンじゃないのね。今分かったわ。さっきは小声にしといて良かった(笑)
まあでも、情念ドロドロ系ミステリ(「奇想、天を動かす」など)も、すっきりドライ系ミステリ(「斜め屋敷ー」など)も書いちゃう、その幅広さはやはりすごいっすね。島田荘司