名探偵はお留守でした。

最近、御手洗探偵と吉敷刑事にばっかり頼っていたので(要は島田荘司ね)
新たに魅力的な探偵を見つけようと思い、この2冊を読んでみました。

「名探偵に訊け」
「名探偵の奇跡」

色々な作家の短編ミステリのアンソロジー
それぞれ10編以上もあり、どんだけ名探偵に会えるんだろうとワクワク♪
がっ!!
まさかの名探偵不在。
訊けと言われても、奇跡とか言われても、まず名探偵居ねーし。っていう。逆に奇跡。

2冊読んで、良かったのは下記3編。

『永遠の時効』横山秀夫
まあ横山秀夫は言わずと知れた警察小説のエキスパートですのでさすがの安定感。短編とは思えない重厚で濃厚なミステリを堪能しました。
この短さでここまでストーリーをひねって更に綺麗に着地させるのがスゴイっす。最後に刑事が容疑者を落とすシーンでタイトルの意味が分かりますが、これは…胸に響きました。これを言われたら…落ちるよね、っていう。

『雷鳴』大沢在昌
大沢在昌は初めて読みました。これはあれですよ、有名な『新宿鮫』の短編らしいですよ。いわゆるハードボイルドってやつですね。ハードボイルドというと主人公のヒトリヨガリ感がまず思い浮かんでしまうんですが(偏見かな)、これは登場人物はお約束の熱さなんですが、それを見つめる作家の目があくまでクール。絶妙のバランスはさすがの大御所ですね(←エラそう)。面白かったので長編も挑戦してみようかな。

『カランポーの悪魔』柳広司
今回一番の(っつーかほとんど唯一の)収穫はこれっ!面白かった。
内容はなんと、動物記で有名なあのシートンが殺人事件の謎を解くという。
しかも事件はあのシートン動物記の中の名作「狼王ロボ」の世界で起きます。こんな小説アリなんですねーすごい。
この人知らなかったんですが、こういった歴史上の人物を探偵役に据えた小説をたくさん書いているそうです。またパスティーシュと呼ばれる文体模写が得意だそうで、漱石文体模写で書いた「贋作『坊っちゃん』殺人事件」(坊ちゃんのその後→ミステリ)なんて超楽しそう!
そんでこの人自身もいろいろ面白い↓
http://www.webdoku.jp/rensai/sakka/michi82.html

この3篇に「探偵」は出てこないんですが(刑事→刑事→シートン!)、
名「探偵役」、という意味だったのかな、このアンソロジーのタイトル。
私としては御手洗探偵のような「ザ・名探偵」を期待していたのでかなり期待外れの2冊でしたが(でもそれを差し引いても、やっぱりイマイチな内容ではあると思うけど)、
柳広司を知ることができたのでヨシとしましょう(笑)
早速図書館で柳広司柳広司と…