奇想、天を動かす! (島田荘司)

またすごいものを読んでしまった…(五右衛門風に)

北海道の吹雪の中を走る列車の中で謎の道化師が踊り狂うという、
江戸川乱歩夢野久作かという猟奇的冒頭シーンからのめり込み、一気読み。
社会問題とミステリの融合(社会派ミステリってことね)がテーマの作品ということで、猟奇的ミステリの部分と、戦中戦後日本の闇とが組み合わさり、壮大で重厚なお話になっています。このミステリに社会問題は不要、とか、無理矢理くっつけただけだというような評価も多いようですが、私的には問題なし。両方がパズルのように組み合わさり、相乗効果ですごい良かったっすー!と軽薄に言いたい。
っていうか、あの戦中戦後のドロドロの部分がなかったら、犯人のあの一生をかけた執念がリアリティーを持てないと思うんだけどな。

これは前に読んだ『北の夕鶴2/3の殺人』と同じく吉敷刑事が主人公なんだけど、まあ東京の一刑事の仕事としては(おおいに)逸脱しているのは確かです。そりゃ上司キレるよねっていう(笑)。出張許可が下りないからって自腹で北海道まで行っちゃいますから。そういえば『北の夕鶴ー』も北海道だったな。吉敷刑事、北海道好きなのか?!(笑)
なのでこれは御手洗探偵の領分だったんじゃないかとちょっと思いますが、でも御手洗探偵だとドライに飄々と解決しちゃうんで、やはりここは日本の過去の闇に打ちのめされ、犯人への想いに煩悶する熱い男、吉敷刑事の出番なんでしょう。

これは内緒ですけど(誰に?)、そう言いながら私、実は一部トリックが理解できていません(笑)しかも結構キモのトリック。うーん…誰か教えてくれ。
これを読んだ方で、トリック全部すっきり理解していますという方、お便り待ってます!