伊坂幸太郎 『ディープ編』

ここ数か月、伊坂幸太郎を結構読みました。
もちろん名前は前から知ってたし、いろんな賞の候補に名前が挙がったり、映像化も結構されてるし、おいおいすごい人気っすね、とヒネクレモノの私は遠巻きに見てたんですが(笑)、本屋でふと手に取った「残り全部バケーション」がすごく良くて、そっから読みだしました。
今日は『ディープ編』(←勝手にくくった)の感想を。

<オーデュボンの祈り>
彼のデビュー作であり、彼の作品の中で一際異彩を放つ作品。
正直途中何度も挫折しかけました。単調。文体が固い。現実味がない。
決して面白くないわけではない。スルメのように噛めば噛むほど味が出そうな気配はビンビン感じるんだけど、私は…頑張って最後まで噛んでましたが結局「あごが痛いわっ!」ってなっちゃいました。でも「こいつ何者なんだ…なにやらよくわからんがすごい新人が出てきた」という読後感を抱かせるには十分な作品ですので、デビュー作としては大成功ではないかと思います(笑)

<魔王>
うーん…ディテールは好きです。
兄弟の会話にはずっと笑わせてもらいましたし、
最初に能力を発揮するシーンのおじいさんとか最高だし。
でも…なんか中途半端なんですよね、お話として。
え?そこで終わる?!っていう。
主人公の特殊な能力(自分の思った通りのことを他人に言わせることのできる能力)は卓抜なアイデアだと思うし、それを社会的なテーマと結び付けたストーリ展開は意外で面白い。そんで言わずもがなのディテールの巧さとくれば、これはもうみっちり大長編を書いて欲しかったなぁ。なんかもったいない。いろいろ。

<モダンタイムス>
これは登場人物が「魔王」とリンクしてますが、話としてはまぁあまり本筋には関係ないかな。そして魔王よりも完成度が低く、いろいろ消化不良なまま終わる、という感じでした。前半にそれはもう魅力的な大風呂敷をぶわっと広げてくれるんですが、それがキレイに収束していかないんですよねー。ディテールや各エピソードは面白いんだけど、全体として観るとイマイチうまいことまとまってなくて「?」ってなるというか。しかも長い。これ、上下巻要りましたかね?なんか迷走してただけのような気が…。どうせなら魔王の方を上下巻にして欲しかったっす。

ということで、伊坂幸太郎のディープ群は私には合わなかったっす。
次回は『ライト編』です(って誰に言ってるのか(笑))