島田荘司 二発!

「北の夕鶴2/3の殺人」
御手洗探偵ではないシリーズ。
冒頭からかなり正統派の推理小説という感じで話が進み、
御手洗シリーズの軽妙洒脱トリッキー上等という雰囲気皆無にも関わらず、
最終的に明かされる犯人の犯行手口が、
御手洗シリーズも真っ青の奇想天外・実行不可な大仕掛けでビックリした。
主役の刑事が満身創痍で愛する女性を救うために一人奔走するという
ハードボイルド的ロマンが全編を貫き、いろいろと盛り沢山な一冊です。
その女性がなぜか犯人の言いなりで利用され追い詰められていくのですが、
なぜ犯人とそういう関係になったのかという過去のエピソードが、
うわぁそういうのほんとにありそうだわー(怖)…という感じで印象に残ってます。
しかしそのリアルな過去の発端と、現在の殺人事件のありえないトリックの温度差がすごいっすね(笑)
まぁそれを無理なく読ませるのが島田さんのさすがの腕、ってことで。
伊坂幸太郎さん的にはこれが島田荘司No.1だそうです。
ちなみに私は御手洗探偵の方が好きー(笑)


「摩天楼の怪人」
舞台はニューヨークの高級高層タワーマンション
御手洗はなぜかコロンビア大学助教授になっていました。
うーん…ストーリーはあれです。オペラ座の怪人。そのまんま。
あれ?オペラ座の怪人みたいだな?でもまさかな。ミスリードかな?とか考えながら読んでたら、結果そのまんまだった、みたいな。
まあ、大枠のストーリーは別として、要所要所のトリックや、だれがその怪人なのか?!という謎解きはさすがの鮮やかさでした。
モデルとなった高層マンションの部屋は実際に安藤忠雄が設計したものということで、私は一番これに興味を惹かれました。
実際に建設はされていないようなのですが、ゴージャスで美しい。
トリックには建物自体のディテールが重要となってくるのですが、
CGの図版が(あたかも実在の建物のように)挿入されていて
構造が分かりやすく、また視覚的効果としても雰囲気が出てて素敵でした。

この三連休に実家に帰った際に持っていくのに
「3日間でちょうど読み終わるくらい」という理由で
長さで今回これを選んだのですが(文庫で680ページ)、
これは御手洗シリーズでもかなり後半に位置するようで
私が読んでいた初期作品とはかなり御手洗の設定なども違い、
またニューヨークが舞台ということもあってか、初期のオドロオドロしさはすっかり影を潜めていてそれも意外でした。
でもやっぱり御手洗探偵は好きなので、
ゆっくりとまた初期作品から読み進めていきたいと思います!