『旅行者の朝食』 米原万里

NHKの「グレーテルのかまど」という番組がお気に入り。
古今東西、有名人のエピソードや小説・絵本・映画などに出てくるお菓子を、実際に作ってみるという番組で、毎回その美味しそうなお菓子達もさることながら、紹介されるそのお菓子にまつわるお話が楽しい。まあ、材料も珍しいものが多かったり、手順が結構煩雑だったりして、なかなか自分も作ってみよう!とはならないけど、観ているだけでなんだか楽しい気分に♪

今まで印象に残っているのは、内田百閒が子供の時によくおばあちゃんにこっそり買ってきてもらって食べていたというシュークリームや、南方熊楠の愛したアンパン、与謝野晶子が子供たちに作っていた月見だんご、などなど。文豪・偉人と言われている人達がなんだか急に親しみやすいお隣さんのように感じられ、今まで知っていたその人たちの像にまた違う一面を見出すことができるのも嬉しい(*^^*)

先日この番組で、ロシア語通訳として活躍した米原万里さんのエッセイに出てくる謎のスイーツ「ハルヴァ」を取り上げていたので、興味が湧いてこの本を読んでみました。なんでもこの本を読んだ多くの人達から「ハルヴァが気になる!」「ぜひ作って見せてほしい!」という声が多くこの番組に寄せられたそう。ハルヴァとは『主に旧東欧・イスラム諸国ではとてもポピュラーで、ゴマやヒマワリの種などと砂糖・植物油などを練り合わせたペースト状のスイーツ』ということですが、私は先に番組を観ていたので何の苦も無くその姿が思い浮かびましたが、確かに文章だけからこのお菓子を想像するのは相当難しい。米原さんは子供時代を過ごしたプラハでロシア人の友達に一口もらったハルヴァが忘れられず、大人になってからもロシア・サマルカンドウズベキスタン・モルダビア・ブルガリアルーマニアと行く先々で探すが類似品はあるもののあの味には出逢えない。ある日友人がギリシャ土産でくれたハルヴァで初めて「あの味に再会!」するが哀しいのは二度と同じものは手に入らないこと。一緒に食べた友人は「あの店の全部買い占めてくれば良かった!」と叫んだという(笑)ここまで書かれたら、そりゃNHKにお願いしてでも見てみたい!と思いますよね。うーん私も食べてみたい!でも作るの面倒!(笑)

子供時代を海外で過ごし、成長してからは通訳として世界中を飛び回っていた米原万里さんならではの「食」にまつわるエッセイは、どれもがスケールが大きく「食」への愛と情熱に溢れていて素晴らしかった^^