「黄昏に眠る秋」 「冬の灯台が語るとき」 ヨハン・テオリン

「黄昏に眠る秋」ヨハン・テオリン

 スウェーデンエーランド島を舞台にしたミステリ。
幼い男の子がある日忽然と姿を消し、警察や島民が手を尽くした捜索でも手がかりはおろか遺体さえ見つからない。しかしそれから20数年後、突然少年の祖父イェルロフのもとに行方不明になった少年の片方の靴が届く。事件により疎遠になっていたイェルロフとユリア(少年の母親)が協力し、捜査を進めた末にたどりついたのは予想もつかない驚きの事実だった!! 
 スウェーデンエーランド島って初めて聞きましたが、島の自然や住民の様子が丹念に描かれていて、知らないうちに島に一緒に住んでいるような気分になり一気読みでした。面白かったです。事件のせいで精神的に不安定になりイェルロフに心を閉ざしていたユリアが、捜査していく中で自然にイェルロフとの距離を縮め、家族の絆を取り戻していく様子もとてもよかったです。徐々に明らかになってくる事件の全貌はかなり壮大で、時間軸的にも地理的にも島に収まりきらないくらい広がり、さらに最後の方にはいろいろとビックリ!!な展開も待ってますので、小さな島の事件と侮って読んでると目がグルグルしますので要注意(笑)いいミステリでした。

「冬の灯台が語るとき」ヨハン・テオリン

 これ、秋から始まる四季のシリーズになってるそうで、二作目は冬。
舞台は同じくエーランド島ですが、物語の担い手は別の家族です。
幼い二人の子供を連れて島に移住してきた家族をある日悲劇が襲い、家族の一人が死んでしまいます。それは事故として処理され、残された家族は悲しみをこらえつつ暮らして行きますが、移住した家は昔からのいわくつきの家で、夜ごと聞こえてくる声・物音・確かに誰かが居る気配…
 厳しい寒さに覆われる島の冬の様子が目に浮かび、その中で語られるこのお話は、幽霊的な挿話も相まって幻想的な世界になってます。一作目に登場したイェルロフが再登場し活躍するのも嬉しい(*^^*) イェルロフ、誰よりも冷静な思考能力と予想外の行動力に、お年寄りならではの温かい思いやりも併せ持つほんと素敵なおじいちゃんです。そしてイェルロフの活躍により、事故と思われていた悲劇が一転、驚きの事実が解き明かされるのです。ブラボーイェルロフ!(イェルロフって言いたいだけみたいになってきた) このシリーズ好きですね。っていうかエーランド島好きになってきた。寒そうだけど(笑)

 次の「春」の邦訳は今年の春に出たばかりなので図書館で順番待ち中。その次の「夏」はまだ邦訳されていないらしい。またどうせ順番待ちになっちゃうので早く邦訳して欲しいものです(←エラそう)
 私基本的に翻訳ものって駄目なんだけど、これは大丈夫でした。違和感なく楽しめました。翻訳ものがダメっていうより、訳者さんとの相性の問題もあるのかもしれませんねー。ちょっと面白かったのは、作中で地方に行ったときに出会う人の「方言」が明らかに九州弁なんですね。仕事で九州の取引先が多いため馴染みがあり、おや?!ってなったんですが、なんと訳者の方が九州出身でした(笑) そうですよねーそりゃそうなりますよねーと納得。あと二作、楽しみだー♪