マグノリアの花たち

1989年公開の映画。作者の実体験に基づく物語。悲しみを受け止めきれない作者が「その体験を書いたら?」というアドバイスを受け戯曲が書かれ、その映画化作品。

数年前になぜか録画されていたのをなんとなく観て心の琴線が数本切れちゃうくらいかき鳴らされてビックリし、それから折に触れて観ては泣いてしまう、大好きな映画。最近また観て、昨日友達に勧めて、勧めたらまた観たくなって今日また観て、せっかくなのでこの私の溢れる想いを書いときます(具体的なネタバレ多分なし)

22歳のジュリア・ロバーツ演じるシェルビーの結婚式で幕を開けるこの映画では、アメリカの小さな町でたくましくかしましく生きる6人の女性がいきいきと描かれ、老いも若きも全ての女性の素晴らしい人生の瞬間が全て詰まってキラキラ輝いている。いいことばかりではない。悲しい事件も起きる。どうしようもない気持ちを抱えてそれでも生きていなかければいけない。でもなぜ?どうやって?

シェルビー、シェルビーの母マリン、町の美容院の美容師トルーヴィ、そこで働くアネル、元町長夫人のクレリー、シェルビー家の隣人でむちゃくちゃ口の悪い問題児(おばちゃんだけど)ウィザー。言いたいことを言いあって揉めたりしつつもいつも横目で相手を見ている。お互いを気にかけている。相手の境遇に思いを馳せて、会って、身体に触れて、大丈夫よ、と伝える。一緒に、生きている。自分だけではない、相手だけでもない、一緒に、生きている。生きるとはこういうことなんだ、と思う。

私的MVPはシェルビーの母マリン。小さな身体にパンパンに感情をこめて全力で生きるその姿がもう健気で、可憐で、切なくて、自分の母を思い出してしまって(あ、生きてます)泣ける。多分マリンの小柄さと怒り方が私の母に似てるので自分と母が揉めた時の記憶(いっぱいある笑)がぶわっと蘇り余計に感情移入してしまう(でもこれからもいっぱい揉める自信ある)。どうしようもない悲劇に襲われたマリンが小さな身体を怒った猫みたいにいからせて全身に力を漲らせて病院の廊下をこちらに歩いてくるシーンが忘れられない。

結婚も出産も経験がないし舞台となったアメリカに住んだこともないし1989年私は小学生だったけど、そういうの全部飛び越えてこの映画に出てくる女性の気持ち全部わかる。全部わかって心にしみて満たされて人生は素晴らしいのかもしれないとあたたかい気持ちで思うことができる。なんていうか世代や時代や属性じゃない普遍的な部分での全女性の連帯感みたいなものが溢れていて地球が出来てから今までに存在した全ての女性と車座になって語り合ってるみたいな安らぎと心強さと希望を感じる。

MVPはマリンなんだけど人として一番好きなのはウィザー。当時55歳のシャーリー・マクレーンが演じているんだけど、本当に口が悪くて言いたいこと全部言って顰蹙買いまくってるけどでもほんといいやつなんですよぅ…大好きだ。こういうおばちゃんになりたい。55歳でオーバーオール似合いすぎるし正装も決まりすぎてるし憧れちゃう。言いたいこと言い過ぎて精神科にかかれと言われた時の「私は病気じゃないわ、ただこの40年ずっと機嫌が悪いだけよ」は名言。ただウィザー、と呼ばれただけなのに切れ気味で返す「whaaat?!」の言い方と表情が大好き笑 

ジュリア・ロバーツプリティ・ウーマンしか知らなくて映画も別に…だったしそんなに綺麗とも演技上手いとも思ってなかったけど、この映画を見てその迫真の演技に驚き、感動しました。美容院でロングヘアをばっさりショートにするシーンがあり、実はショートにするのにはシェルビーと母親マリンしか知らない辛い理由があるんだけど、それを知らされずに見ている私たちはショートになったシェルビーがなぜ鏡を見てそんなにショックを受け、涙を浮かべるのかわからない。でもその時のシェルビーの表情、マリンが慈愛の笑顔で「素敵よ」と言った後に涙をこらえ、感情をのみ込み、覚悟を決めたように「OK」とつぶやくシーンは事情を知ってから見直すと本当に鳥肌が立つくらい気持ちが伝わって来てすごい。

とにかくこの映画のすばらしさは全編を貫くユーモア。どんなときでも心にゆとりを(無理にでも)持つ、面白ポイントを探して心をヘルシーに保とうとする、みんなで笑っちゃおうよというその姿勢。ラストのマリンが泣き叫ぶシーンからの一連の流れは私が今までに観たすべての映像作品(言う程映画観てないけど)の中のNo.1。すごい。脚本も演技も映像もこれ以上なく素晴らしい。最終的に55歳と58歳が墓地のベンチでおしくらまんじゅうみたいなケツ相撲になって58歳が負けてベンチから落ちて爆笑して「life goes on」ですよ?!人智を超えてる笑 

女性女性言って来たけど脇を固める男性陣もみんな魅力的です。個人的には付き合うならスパッド(トルーヴィの夫)、結婚するならドラム(シェルビーの父親、マリンの夫)。ドラムは飄々としていて憎めない、チャーミングないたずら小僧って感じでほんと最高。まあいたずら小僧のおじさんと言いたい放題おばちゃん(ウィザー)が仲の良い隣人な訳ないのでこの2人の殺しあうんかってくらいの犬猿の仲がまた最高。人智を超えて地球上全ての人間との連帯を感じられる映画ですのでみんな観ましょう✨(壮大)

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